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とある国で革命が起こり、冷酷非情な大統領と小さな孫・ダチが懸賞金をかけられて追われる身となる。
大統領はクーデーターを制圧して権力を取り戻すために、ダチは幼なじみのマリアと別れたくなくて国に残り逃亡しそこねたからである。ダチは5歳の男の子で、かつては大統領も持ち合わせていたはずの大統領の純粋さを表す存在で、国に残る動機の違いからして大統領の独裁者ぶりを表している。
大統領は、さすが一国を支配する人物であるだけに、とても頭がよく機転が効いて、小さな孫をすら利用して、厳戒な警備をすり抜けて協力者のいる海岸を目指す。
その大統領が、長い逃亡の過程で、暴力の連鎖や、ともに行動することになった政治犯の思想を知るなど、かつての自分の支配国の現実を目の当たりにして人間性を取り戻していく。
この映画はコーカサス山脈の麓にあるジョージアで撮影されている。色彩のない荒涼とした風景にときおり現れる色彩は、豪華な宮殿でマリアとダチが社交ダンスのレッスンをしているシーン、ダチの変装用の赤いスカーフだけ。
そんな背景の中、大統領にも孫にもほとんどセリフがなく、2人の感情の動きは目の動きからしか読めない静かな映画である。主要な登場人物にも名前はない。それだけに、現に各国で起きている革命や暴力の連鎖の普遍性が強調されて、想像力が沸いて、迫力がある。
話題のラストーシーンは、現実の革命でこんなことが起きたら、もう革命や戦争なんて起きないでしょう、でも、人間としてこうあれたら理想、と思わせるような、いちばん考えさせられる見事な終わり方。
傑作です。
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